福島便り
バイオマス由来の水素製造システムの確立を目指す福島大などは、2029年(令和11)度をめどに小規模な実証・実用化プラントを完成させる。身近に入手しやすい剪定枝や稲わらなどからエネルギー用の水素と、利活用可能な炭化物を併せて生産させることで、全国初の新たな地産地消モデルを構築する。大学構内には付属の水素エネルギー総合研究所の本棟と研究・分析棟を新たに整備し、研究機能や人員体制を強化する。9日、同大が発表した。
プラントの仕組みは【図】の通り。バイオマス原料を「蒸し焼き」の状態にし、発生した水蒸気から酸素を分離させて水素を取り出す。この過程で生じた残さの炭化物をタイヤの補強材などとして活用する。一連の取り組みは、内閣府地方大学・地域産業創生交付金事業に採択された。同大をはじめ、福島県やエネルギー・エージェンシーふくしま、大和三光製作所、住友ゴム工業が連携して共同研究する。プラントは実験室規模から徐々に拡大させ、年間60トンの水素を製造できる規模までに増大させる見通しで、双方の生産に最適な熱分解や触媒、原材料なども見定める。最終的には需要が見込める県内の工場近辺にプラントを配置し、県全体への水平展開を目指す。
2025~2029年度まで国の補助支援を受け、同大は学内の水素エネルギー総合研究所に3階建て本棟を2026年度に整備する。2027年度には隣接する既存建物を改修し、平屋の研究・分析棟を開設させる予定。