福島大16コース設置 グローバル探究や教育臨床 2027年度 若者流出や少子化 福島県内課題に対応

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福島大16コース設置 グローバル探究や教育臨床 2027年度 若者流出や少子化 福島県内課題に対応

福島便り


2027(令和9)年度に全学再編する福島大は教育、政経、理工、食農の四つの学部に合わせて16のコースを設ける。若者の福島県外流出や加速する少子高齢化など、県内の各地域が抱える深刻な課題に向き合う研究・教育体制とし、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの一層の復興にも貢献する人材を育成する。9日の定例会見で三浦浩喜学長が全学再編の詳細を発表した。
再編後の学部は【図】の通り。3学群5学類19コースから4学部体制に移行し、教育に5コース、政経に3コース、理工と食農にそれぞれ4コースを置く。定員は教育235人、政経400人で、前身となる学類から25人ずつ減らす。理工は215人、食農は135人となり前身の学類に比べ計50人増える。在学生や2026年度に入学する学生は入学時の教育課程、卒業要件を維持する。理工、食農は入試の選抜方法に変更はない。教育と政経は検討中だ。
教育には福島県教員を目指す受験生の特別な入試枠を設ける。課題となっている教員のなり手不足に対応し、若者の県内定着につなげる。原発事故で避難区域が設けられた被災地などでの実習を重視し、福島ならではの視点を持つ教員を輩出する。コースには、障害の有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」や文系、理系の枠を超えた情報を課題解決につなげる「STEAM教育」などがある。
教育人材の育成を目指し県教委が県立高に設けている「教育コース」と連携し、高校生が大学の授業を受け、福島大入学後の単位を先取りできる「アドバンストプレイスメント」制度を導入する。
政経は人口減少や少子高齢化などの地域課題を解決するため、地域資源を活用した新しい価値の創出や地域経済の再構築に寄与する研究と教育を展開する。現在、行政政策学類に置いている夜間主コースは2026年度の入学生を最後に廃止する見通し。
理工と食農は、共生システム理工学類と食農学類の現行コースを引き継ぐ。定員を増やし、理工は震災と原発事故後に重要性が増しているエネルギーや脱炭素分野の研究を強化する。食農は震災と原発事故で大きな被害を受けた県内農業の再生と振興を目指し、実践型学習を繰り広げる。気候変動など現代的課題に対応した人材を養成する。
2031年度にも大学院も再編する。
福島大の全学再編は2004(平成16)年の国立大法人化で学部制から学群・学類制に移行して以来。2026年度に文部科学省が設ける学校法人審議会の審査を受ける。関係者によると、地方大学は近年、積極的に地域課題に取り組んでいる。■付属小・中を統合
義務教育学校に
福島大は全学再編に合わせ、2027年度から福島市の付属小・中を統合し義務教育学校に移行する。当面は小学校と中学校の現校舎を使い、校舎が離れた「分離型」となる。
1学年ごとの人数を段階的に減らし、探究を柱とした個性化教育を展開する。小学生に当たる前期課程を現行の1学年105人から64人、中学生相当の後期課程を現行の1学年140人から84人とする。校内に教職大学院生用の部屋を設け、実習中の学部生らが大学院生と共に学ぶ環境をつくる。付属幼稚園の今後の在り方についても検討中で、同大は「なるべく早く結論を出したい」としている。