福島便り
イトーヨーカドー福島店の閉店で消費が福島市外に流出―。桜の聖母短大の和田賢一教授(60)=経済学=は9日、福島市のJR福島駅西口駅前にあったイトーヨーカドー福島店の閉店で市内の経済的なマイナス影響が90億円を超えるとの調査結果を発表した。福島市内総生産で見ると、年間の農業生産額の6割に相当する額が押し下げられる計算で、和田教授は「影響は大きい」と指摘。閉店から1年を前に、市民のニーズに合った活性化策を早急に講じる重要性を訴える。
福島市民に加え、近隣の二本松、伊達両市民を対象にインターネットや通信アプリLINE(ライン)を通じて調べ、計745人から回答を得た。福島店の閉店が市内経済に与えた影響に関する結果の概要は【表】の通り。
年間の平均来店回数、1人当たりの消費支出などを基に福島店営業時の年間消費支出額を算出し、福島市民は130億円超、二本松・伊達市民は30億円超と推計した。福島市内の総生産を1・07~1・12%押し上げる効果があったという。
一方、閉店後は、営業時の支出額のうち福島市民は36・0%に当たる47億1500万~48億7500万円、二本松・伊達市民は56・7%となる17億3200万~19億300万円が郡山市や仙台市などに流出。経済的なマイナス影響は合計92億200万~96億7500万円発生したと独自に算出した。
福島市内の総生産を0・43~0・45%下げた形で、金額ベースでは約49億~52億円の減少。和田教授は2022(令和4)年度の市内の農業生産額は年間約89億円だったとし、「その約6割がなくなるほどの金額と考えれば、(押し下げ幅は)大きい」と話した。■中心市街地に必要な店舗、施設
20~60代大手雑貨店最多
調査では福島市民に対し、中心市街地に必要な店舗や施設を尋ねた。市民の要望や買い物動向を踏まえ、大手雑貨店やスーパー、飲食店、娯楽施設などは市街地の活性化につながると指摘している。
市街地に求める店舗や施設を年代別に見ると、20~60代はそれぞれ大手雑貨店が最多で、他の10代と70代も2番目に高かった。スーパーは20代、40代、50代、70代でいずれも上位5位以内。買い物動向から食料品や日用品の購入は福島市内にとどまる傾向があり、市中心部に職場がある女性は退勤・下校時の買い物頻度が高いとし、大手雑貨店やスーパーの中心市街地立地は有効とした。
飲食店や娯楽施設も多くの世代で上位。市内の施設を利用する市民の傾向が高く、増設が効果を生む可能性があるとした。