少子化を生きる ふくしまの未来 第4部「出会い・結婚」(4) 企業の事情(2) 私生活触れづらく

  • [エリア] 須賀川市
少子化を生きる ふくしまの未来 第4部「出会い・結婚」(4) 企業の事情(2) 私生活触れづらく

福島便り


福島県須賀川市の製造業ミウラは従業員約70人で、事務職員など数人の女性を除く大半を男性が占めている。社長の三浦貴信さん(49)は異性との出会いを求める独身の従業員を、どうすれば後押しできるかを悩んできた。
同社は土曜・日曜を休日とする完全週休2日制を導入している。有給休暇の取得を推進するなど、働きやすい環境づくりも進めている。日々の仕事だけでなく、プライベートも充実させてほしいとの思いからだ。しかし、「個人の意思が尊重される時代。会社からは交際や結婚に関する話題に触れにくい」と迷いを打ち明ける。
三浦さんは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が起きる直前の2011(平成23)年1月に、父親から経営を引き継いだ。工場を現在地に移し、砂型鋳造やプラスチック成形を中心とした高い技術力と一貫型の生産能力を背景に事業を拡大した。地元の高卒者の採用にも力を入れてきた。
さらに事業を発展させるためには、優れた人材が欠かせない。少子化を背景に、人手不足が深刻化する中、福利厚生の充実に着手した。2017年には若年層の採用・育成に意欲的で、雇用管理の優れた中小企業をたたえる国の「ユースエール認定」を須賀川市の事業所として初めて取得した。
近年は子育てをしやすい会社を意識している。従業員の妻を積極的に雇用し、一部の職種にはパソコンを貸し出して在宅で勤務できる仕組みを整えた。学校の長期休みなどに合わせ、家族旅行などに活用してもらおうと、最長で5日間の連休を申請できる仕組みも新たに設けた。
その一方、独身者をどうサポートしていくべきかについては、明確な方策を見いだせていない。会社で長く活躍してもらうためにも社員には家庭を築き、生活を安定させてほしい。ただ、プライバシー意識の高まりなどの時代の変化を踏まえると「良かれと思っての言動を誤解されてしまったら―と思い、なかなか口を出せない」ともどかしさを口にする。■知り合う場社会に必要
そんな思いを抱えていたある日、知り合いの経営者に紹介されたのが、県が昨年度に始めた、新たな出会いの場創出事業だった。従業員の婚活支援に積極的な企業や団体を募り、出会いを求める従業員向けの交流イベントを催す試みだ。
自治体が関わる取り組みという「安心感」に背中を押され、三浦さんは自ら、社内の独身者に昨年12月に市内で催されたイベントを案内した。声をかけた相手の中から、3人が会場に足を運んでくれた。終了後、参加者からは「幅広い仕事の人と交流できて楽しかった」といった感想を聞くことができ、胸をなで下ろしている。
「自分のような心境でいる経営者は少なくないのではないか。異性との出会いや結婚を望む男女が、外部の人々と知り合えるきっかけが社会の中で増えていってほしい」と行政による後押しの充実を期待している。