福島便り
福島県や市町村は2000年代ごろから、少子化対策として結婚応援ボランティアの組織化や婚活イベントの開催をはじめ、独身者の出会いと結婚を後押しする、さまざまな施策を打ち出してきた。各地の公共施設などには事業を伝えるチラシ、リーフレット類が数多く並んでいる。
ただ、県内の近年の婚姻数は2015(平成27)年の8888件を頂点に9年連続、出生数は2013年の1万4546人を境に11年連続で減少しており、右肩下がりを抜け出せていない。
対策を受け持つ行政の現場の担当者からは、婚活支援事業の現状について「手探りの状態」「施策の効果をつかみにくい」といった悩みが漏れる。■手探り続く公的支援
県は昨年度、県内の企業と連携した出会いの場づくりに乗り出し、従業員の婚活支援に関心を寄せる事業所を募った。「オーダーメード型」を特徴として企業側の意向に沿った企画内容や開催時期、会場を練る。告知や募集、運営に協力してきた。
初年度はバーベキュー、そば打ち体験などの趣向で年間6回のイベントを開催。約40の事業所から、延べ約100人の男女が参加した。共同作業を通じて親睦を深めるのが狙いだ。今年度は民間企業に加え、市町村や消防などにも参画を呼びかける。事業を担当する、こども・青少年政策課主幹の遊佐周平さんは「多様な出会いの機会を若者に提供する場にしたい」と範囲を拡大する狙いを明かす。
一方、従業員を送り出した企業や参加者へのアンケートでは「『男女の出会い』が前面に出過ぎると、募集や参加がしづらい」といった声も届いた。このため、オーダーメード型と並行し、幅広い層が集まれる事業も進める。ビジネス関係の講習と交流会を組み合わせた「異業種交流会型」の会合を新たに催す。遊佐さんは「当事者の視点や心情をくみ取り、会場に足を運ぶ心理的なハードルを下げたい」と話す。
婚活支援事業の在り方を見直す動きは、市町村の中にも出始めている。
本宮市は2016年度から婚活イベントを開催してきたが、参加する男女比の偏りや民間による同種事業の活発化などを踏まえ、2019年度限りで終了した。少子化に伴う自然減少を抑止する施策としては、保育環境の充実や妊娠・出産期の相談対応などに力を入れている。
一方、県外から転入し、5年以上定住する意思がある世帯(2人以上)に対して50万円を交付する「ウェルカムファミリー移住支援金」や、新婚世帯向けの住居費補助の上乗せといった経済的なサポートを充実させている。
総務政策部次長兼政策推進課長の鈴木正史さんは「施策の効果を検証した結果や時代の変化などを見極め、行政が担うべき最適な支援を今後も模索する」と市の姿勢を説明する。