福島便り
福島県浪江町のかもめミライ水産が町北産業団地の「陸上養殖イノベーションセンター」で陸上養殖を進めてきた生食用サバが初めて出荷された。「福の鯖」の名称で町の新たな特産品として売り出す。10日、町内の道の駅なみえで出荷式が行われ、関係者が東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を後押しする新産業に期待を寄せた。
かもめミライ水産によると、生食用サバの出荷は東北地方で初めて。出荷量は数千匹で順次、いわき市中央卸売市場に卸す。11日から出荷作業を本格化させる。その後、県内のスーパーで販売し、6月以降に浪江町の飲食店にも流通する予定。2027(令和9)年までに年間60トンの生産を目指し、将来的には海外展開も視野に入れている。
エンジニアリング会社大手の日揮(横浜市)と、いわき魚類がかもめミライ水産を設立し、昨年6月から稚魚の飼育を始めた。浪江の水道水を含んだ人工海水で育てるため、食中毒の原因となる寄生虫「アニサキス」を取り込む心配がない。生育状況は人工知能(AI)を活用した先端技術を取り入れて管理した。
出荷式では、かもめミライ水産の大沢公伸社長が「養殖技術を確立し、生食用のサバを浪江から世界に発信していく」と決意した。町関係者が福の鯖をすしで試食。吉田栄光町長は「脂がのっていておいしい。復興の象徴にしていきたい」と笑顔を見せた。陸上養殖イノベーションセンターの見学会も催された。