復興の祈り舞踊に込め 92歳、表現の情熱今も 8月連盟50周年で新作披露 福島県内第一人者 横山慶子さん(浪江出身)

  • [エリア] 郡山市 浪江町 いわき市
復興の祈り舞踊に込め 92歳、表現の情熱今も 8月連盟50周年で新作披露 福島県内第一人者 横山慶子さん(浪江出身)

福島便り


福島県内の現代舞踊界の第一人者で浪江町出身の横山慶子さん(92)=郡山市=は自身の半生を軸に郷土愛や東日本大震災、東京電力福島第1原発事故からの復興の祈りを随所に落とし込んだ新作の現代舞踊「Memory(メモリー)」を制作している。卒寿を超えた今も衰えない創作と表現への情熱を胸に、8月にいわき市で開かれる県洋舞連盟の設立50周年記念公演で披露する。振り付けや演出などだけでなく門下生ら25人と共に自らもステージに立つ。「震災の記憶を風化させてはいけない」。70年を超える舞踊人生で育んだ絆と被災地の思いを伝える。
「Memory」の詳細な内容は検討中だが、幼少期の思い出や浜通りで過ごした日々、震災と原発事故による避難生活と復興に向けた歩みなどを約30分のステージで表現する。震災を題材とした作品は過去にも上演したが、深掘りした自らの人生模様を盛り込むのは初の試みとなる。
浪江町の自宅でコンクール用の衣装を縫っていた時に被災した記憶は今も鮮明だ。古里を追われ、一変した日常を強いられた。浜通り各地の教室は閉鎖された。踊れるのは当たり前じゃない―。いつしか、スタジオで一礼をするのが日課になった。新作の原点となった体験や感謝の思いも伝える。
県洋舞連盟は1975(昭和50)年に横山さんら洋舞家14人で立ち上げた県洋舞家協会が前身。1984年に一度解散し、連盟として再始動した。横山さんは初代会長を約30年間務め、現在は特別顧問。半世紀を飾る記念作品づくりを連盟から委託された。50年の歴史を支えてくれた人々に恩を返す場と捉え、4歳から92歳の自分まで幅広い年代の25人で創り上げる。
「年齢はただのナンバー」と強調する。両膝は人工関節で、脊柱管狭窄[きょうさく]症の手術歴がある。心臓に水がたまり、薬を手放せない。だが稽古場に立つとスイッチが入る。礼節を重んじ、指導には妥協を許さない。ひとたび練習が終われば、生徒に温かみのある言葉をかける。長女でYokoyama
Dance
Company(横山ダンスカンパニー)代表の真理さん(58)は「教えた後に『疲れた』と言った記憶がない」という。指導力と人間性に魅了された門下生は2千人に上る。
70年を超える舞踊人生は苦労も絶えなかった。努力と挑戦を積み重ね、数々の実績を残した。後進の育成と普及に尽くしてもなお、舞台への思いは増すばかりだ。「生き方を考えさせられ、感動していただける内容にしたい」。表現者として新作の上演に全身全霊をかける。
県洋舞連盟設立50周年を記念した「洋舞の祭典2025」は8月31日、いわき市のアリオスで開かれる。