あんぽ柿 冷凍技術開発 「旬」長~く 通年販売で消費、販路拡大 JAふくしま未来と日本郵便

  • [エリア] 福島市 伊達市
あんぽ柿 冷凍技術開発 「旬」長~く 通年販売で消費、販路拡大 JAふくしま未来と日本郵便

福島便り


福島県北地方の冬の味覚「あんぽ柿」を年間通して味わって―。JAふくしま未来(本店・福島市)と日本郵便は7日、独自の冷凍技術を用いた「あんぽ柿」の通年販売に乗り出した。冷凍商品化は質や味の維持が課題だったが、約3年かけて安全性と風味、食感を保てる製法を確立。カタログ販売にこぎつけた。常温保存が基本で賞味期限1カ月程度という「旬」の短さを解消し、贈答用や海外向けなどへの消費拡大、販路開拓が期待される。
商品名は「冷やし伊達のあんぽ柿」で、日本郵便が販売・配達を担う。例年、あんぽ柿のシーズンは一般的に収穫、加工を終えた12月から翌年2月末ごろとされる。気温が上がり始める3月以降は実の内部の水分量が減って風味が落ちるため、通常は市場には出回らない。冬の特産を春夏にも味わってほしいとの思いから、構想されたのが冷やしあんぽ柿だ。
JAふくしま未来が3年前に冷凍方法の実証実験に着手。水分量や食味などに関する成分データの保管中の変化を計測・分析し、加工から時間が過ぎても安全性や食味、風味が損なわれない製法を導き出した。■夏場や入浴後のデザートに
新商品は解凍後、あんぽ柿特有の滑らかな食感を残しつつ、冷やすことでスッキリした甘さと十分な歯応えを感じられる。夏場や入浴後のデザートなど幅広い食べ方を楽しめるという。
JA全農福島が取り扱う県産あんぽ柿の販売量は2010(平成22)年産が1218トン、販売額約18億4千万円だった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後の2011、2012両年は出荷できなかったが、以降は次第に回復。2024年産は764トン、販売額約13億1千万円に上った。
JAふくしま未来は海外の販路開拓に向け、これまで東南アジアや米国に試験的に輸出した実績がある。ただ、常温の商品は賞味期限の短さに比べて輸出前の検査や運搬に要する時間の長さがネックとなり、本格的な海外展開には二の足を踏んでいた。同JA営農経済部の担当者は国内の販売拡大に加えて「冷凍加工で賞味期限が延び、海外輸出への道が大きく開ける」と手応えを口にする。
あんぽ柿を生産している伊達市の農業佐藤孝一さん(70)は現在も出荷量が原発事故前の7割程度にとどまっている。「これまでにない新しい食べ方として新たな消費者に親しんでもらいたい」と新規ファンの獲得を願った。あんぽ柿が好物という福島市の無職斎藤藤子さん(76)は「どんな味や食感なのか。早く食べてみたい」と期待した。







7日は販売開始に合わせたセレモニーが福島市の福島東郵便局で行われた。JAふくしま未来の数又清市組合長があんぽ柿の産地復活への思いに触れ、「幅広い年代の人に食べてもらいたい」と呼びかけた。
あんぽ柿の復活を流通面から支えてきた日本郵便県北部地区連絡会の太田浩幸統括局長(岩代郵便局長)は「全国の人に届けたい」と言葉に力を込めた。※ふるさと小包「冷やし伊達のあんぽ柿」は県内の全郵便局、宮城県の一部の郵便局、インターネットで6月30日まで申し込みを受け付ける。価格はあんぽ柿230グラム入り・2箱が税込み2980円、230グラム入り・3箱が同3680円。問い合わせは各郵便局へ。